八道料理

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八道(パルド)とは、李氏朝鮮時代に決められた行政区画であり、北朝鮮と韓国の行政区画の基礎。1895年まで維持されました。
朝鮮八道は、京畿道(キョンギド)、忠清道(チュンチョンド)、慶尚道(キョンサンド)、全羅道(チョルラド)、江原道(カンウォンド)、平安道(ピョンアンド)、黄海道(ファンヘド)、咸鏡道(ハムギョンド)で構成。
現在は北朝鮮側が平安道、黄海道、咸鏡道、韓国側が京畿道、忠清道、慶尚道、全羅道で、江原道のみ両国ともに同じ行政区名が存在します。
そして、この行政区画を基準に、韓国と北朝鮮ではさらに地域が分かれています。
八道という言葉は現在も「朝鮮半島の地域」という意味で使用され、民族の伝統文化の存在を表現しています。
各道の名称は、京畿道以外はその地域において代表的な二都市の最初の名前から以下のように付けられました。

そして、八道には各地域の特産を使った個性溢れる料理があります。

ソウルの周辺という意味 →

忠州(チュンジュ)+清州(チョンジュ)→

↑ 慶州(キョンジュ)+尚州(サンジュ)

全州(チョンジュ)+羅州(ナジュ)→

← 江陵(カンヌン)+原州(ウォンジュ)

平壌(ピョンヤン)+

     安州(アンジュ) →

黄州(ファンジュ)+

         海州(ヘジュ)→

← 咸興(ハムン)+鏡城(ギョンソン)

京畿道は、ソウルを囲む地域であり、かつて高麗の首都として栄えた開城(ケソン)も含みます。西側に黄海(ファンヘ)、北や南東側に山岳地帯が広がる地域のため、農水産物が豊富に採れます。開城では高麗時代の味を引き継ぎ、贅を極めた料理がありますが、京畿道料理は調味料や薬味を余り使わず全体的に薄味で、素朴なものが多いのが特徴です。
三国時代からすでにあったカブ。京畿道の江華島(カンファド)では、朝鮮時代の中期から栽培が始まりました。江華カブと言って、白色または紫がかった色で、甘味があります。元々は大根を植えていましたが、栽培しているうちに形や色が変化したことで、スンムが生まれました。たんざく状に切ったカブに、サッパの塩辛を使うのが、カブキムチの特徴です。
<代表的な料理>
開城餅スープ(ケソントックッ)、白菜と海産物の包みキムチ(ポサムキムチ)、茹で餃子(ピョンス)、開城スープかけご飯(ケソンタンバン)、水原カルビ(スウォンカルビ)

 

忠清道は、現在の行政地区では忠清北道(チュンチョンプクド)と忠清南道(チュンチョンナムド)に分かれます。忠清北道は内陸にあたり、ほとんどが山間部になるため、山菜やきのこ類が豊富。一方の忠清南道は黄海(ファンヘ)に面しているので、海産物がふんだんにあります。料理は全体的に淡泊。素材の味を活かしたものになっています。
忠清道は土壌の関係で白菜が多く取れなかったため、生育しやすいかぼちゃを多く栽培。ヌルグンエホバッといって、長期保存ができるかぼちゃです。それからサイコロ状のかぼちゃキムチが誕生し、更には白菜と薄くスライスしたかぼちゃを混ぜ合わせたキムチも、この土地の定番となりました。古漬けのかぼちゃキムチはみそで炒めると、ご飯泥棒のおかずになります。
<代表的な料理>
大豆もやしご飯(コンナムルパッ)、ワタリガニのしょうゆ漬け(ケジャン)、切り干しかぼちゃ(ホバッコジ)公州スープかけご飯(コンジュチャンクッパッ)、牡蠣ポサム

 

慶尚道は現在、慶尚北道(キョンサンプクド)と慶尚南道(キョンサンナムド)に分かれています。慶尚北道は東側が日本海に面し、道のほとんどが山脈に囲まれた盆地で、米や豆の農業が盛ん。イカやカニなども漁業も活発です。慶尚南道は韓国の南東に位置し、対馬海峡に接しているため、韓国で一番漁業盛んです。塩辛の種類は全羅道(チョルラド)に次いで多く、イワシの塩辛を良く使用します。調味料も香辛料も大量に使うため、総体的に味が濃く、刺激的なものが多いのが特徴です。
慶尚道ではニラキムチのことをチョングジと言います。南部地方の温暖さからニラの腐敗を防ぐために、塩漬けは行わず、いわしの塩辛にニラをあわせて寝かせてから、キムチヤンニョムに漬け込みます。慶尚道では海の仕事をしている方が多く、体力の消耗が激しいため、滋養強壮に良いニラキムチが好まれています。
<代表的な料理>
晋州ピビムパッ(チンジュピビムパッ)、海鮮ネギチヂミ(ヘムルパチョン)、安東塩サバ(アンドンカンコドゥンオ)、丸鶏の水煮(タクペクッス)、イヌヤクシソウのキムチ(コドゥルペギキムチ)

 

全羅道は現在、全羅北道(チョルラプクド)と全羅南道(チョルラナムド)で構成されています。全羅道は西と南が海に面しているため、海産物が豊か。肥沃な平野では、良質な穀物な野菜、山岳地では山菜が採れる上、土地の貴族たちが優れた料理法を代々伝えてきたため、韓国の中で食文化が勝っていると言われています。
全羅道料理は塩辛や香辛料を沢山使うため、塩味や辛味が強くなっています。
全羅道の特産品、ほろ苦さが特徴的な芥子菜があります。以前はどのキムチにも芥子菜が必ず入っていましたが、いまでは石山(トルサン)キムチといって、芥子菜単独の辛味の強いキムチがあります。本来は水キムチにするのが一般的で、根元が紫色の芥子菜を使うことで、水キムチの汁がピンクになります。来客のあるときは、餅とこの水キムチを一緒にお出しするのが礼儀です。
<代表的な料理>
全州ピビムパッ(チョンジュピビムパッ)、大豆もやしのスープかけご飯(コンナムルクッパッ)、エイの刺身(ホンオフェ)、イイダコ鍋(ナッチジョンゴル)、灰貝の和え物(コマッムチム)

 

江原道は、北朝鮮と韓国の双方に属します。高原、山岳地帯が広範囲に広がり、じゃがいも、とうもろこしなどの畑作が中心。山菜も豊富に採れます。日本海に面している地域ではスケソウダラ、イカが漁獲されるため、これらを使った料理が多く存在します。
江原道の料理は見た目にも素朴で、自然の風味が活かされているので、使用する調味料や薬味は少なめです。
江原道では大根の栽培が多いため、キムジャンでは大根キムチを多く作るのですが、塩辛を多く食べないため、塩辛の代わりに凍太(トンテ)といって半乾きの鱈をキムチにいれます。長期保存が可能なので、凍太は時間の経過とともに塩辛のようになります。
<代表的な料理>
冷たいそば(メミルマッククッス)、いかの肉詰め(オジンオスンデ)、どんぐりのでんぷん寄せ(トトリムッ)スケソウダラの焼き物(トンテクイ)、じゃがいもすいとん(カムジャスジェビ)

 

朝鮮八道では、平壌(ピョンヤン)がかつて属した道で、現在は平安北道と平安南道に分かれています。山間部が険しく、寒暖の差が激しいことで肉料理が好まれ、牛、豚、鶏、雉を使ったものが沢山あります。西海に面して平野が広がり、畑も多いため、大豆や緑豆料理がバラエティに富んでいます。平安道の料理は薄味。ボリュームのあるものが好まれます。
平安道のキムチは、塩辛の使用量が少なく淡泊な味わい。漬け汁が多く、牛のスープを使うこともあります。茄子に切り目を入れて、具材を挟み込むキムチが有名です。
<代表的な料理>
冷麺(ネンミョン)、おからと豚バラの煮込み(コンピジ)、団子スープ(クルリンマンドゥ)、緑豆チヂミ(ピンデトックッ)、魚粥(オジュク)

 

黄海道は穀倉地帯が広がり、米や雑穀の生産量が多く、さらにはこの雑穀をエサにして家畜を育てているので、豚肉や鶏肉に独特の味わいがあります。また、貝類が良く採れるため、貝料理の種類は特に多いのが特徴です。味付けは程よいあんばいで、飾らない料理と言えます。
野菜や海鮮を入れて、白菜で丸く包むポサムキムチが有名です。ポサムキムチは唐辛子の使用量が少なく、さっぱりとした味わい。黄海道の味付けを最大限に活かしたキムチです。
<代表的な料理>
かぼちゃのキムチ鍋(エホバッキムチチゲ)、キムチご飯(キムチパッ)、茹でハマグリ(チョゲウルム)、貝のなれ鮨(ヨナンシッケ)、黍粥(ススチュク)

 

咸鏡道は現在、咸鏡北道(ハムンプクド)と咸鏡南道(ハムンナムド)に分かれています。山岳地帯が険しく、気候が寒い地域。日本海に面しているため、山海の味が楽しめます。名物料理の咸興(ハムン)冷麺は、エイやカレイなどの刺身をのせたもの。咸鏡南道では辛い味付けですが、北側は辛くありません。咸鏡の料理は薄味ながらも、ニンニクや唐辛子の香辛料を多く使うのが特徴です。
さっと湯がいた大豆もやしを、たっぷりの漬け汁に入れて作るキムチは、あっさりとした味わいです。
<代表的な料理>
牛あばら肉のスープ(カリクッス)、刺身冷麺(フェネンミョン)、じゃがいもの蒸し餃子(カムジャマッカリマンドゥ)、スケソウダラの肉詰め(トンテスンデ)、大豆チヂミ(コンプッチム)