K-FOODコラム

22. 高麗人参から見る日韓交流史




高麗人参。



と呼ぶ人がいれば朝鮮人参とも呼びますし、

一方で正式な和名はオタネニンジンだったりもします。

普段はあまり使うことの少ない呼び名ですけどね。



漢字では「御種人参」と書きます。



もともと日本に自生するものではなく、

原産地である朝鮮半島から種子を輸入したので御種人参。

初めて栽培に成功したのは18世紀になってからで、

ちょうど8代将軍、徳川吉宗の時代だそうです。



わざわざ種に「御」の字をつけていることからも、

薬用として大切にされていたのが伝わります。



また、栽培が始まる以前の歴史を紐解いてみると、

ずいぶん昔から輸入されていたのがわかります。

日本におけるもっとも古い記録は……。



「739年!」



『続日本紀』よれば渤海国の使節が聖武天皇に、

高麗人参30斤を贈ったとの記録が残っています。



どころか、聖武天皇ゆかりの品々を収蔵した、

奈良の正倉院にも宝物として高麗人参が残っていたり。

日本において朝鮮半島からやってくる高麗人参が、

いかに貴重だったかが伺えるエピソードです。






そんな高麗人参は現在も多く輸入されています。



エキスだったり、お茶だったり、加工食品だったり、

あるいは化粧品、石鹸などの美容製品だったり。

さまざまな形で日本に入ってきています。



また、お土産としてもらうこともありますよね。



個人的にいちばん嬉しいのは写真のチョルピョン。

燻蒸した高麗人参のスライスを蜂蜜漬けにしたものです。

高麗人参にありがちな苦味がほとんど感じられず、

健康のためというよりも、



「美味しいから食べる!」



と思える高麗人参製品の代表格です。






そう、高麗人参って美味しいんですよ。



どうしても薬効ばかりが強調されがちですが、

食材として見ても、調理法を工夫すればかなり優秀。

サムゲタンのようにただ煮込んだだけだったりすると、

土くささと苦味が嫌という声も多いですけどね。



味の面でもっとも秀逸なひとつが写真の、

インサムティギム(高麗人参の天ぷら)。



衣をつけて揚げることで特有の苦味が軽減し、

むしろホクホクとした甘味を感じます。

ちょっと蜜につけて食べるとさらにいい塩梅。






あるいは高麗人参の名産地を訪ねてみると、

高麗人参を巧みに使った郷土料理にも出合えます。



写真は慶尚北道の栄州(ヨンジュ)で食べた、

高麗人参入りのトッカルビ(叩いた牛カルビ焼き)。



にょろっと尻尾のように高麗人参が見えていますよね。



栄州といえば、高麗人参の名産地として知られ、

かつ韓牛(韓国のブランド牛)の飼育も盛んな土地。

その両者を組み合わせたのがこの料理です。



いちばんの持ち味はかぶりついたときの意外性。



ジューシーな肉汁の中から高麗人参が顔を出し、

食感とほどよい苦味がアクセントになります。






最後は少しヒネって日本のご当地グルメから、

埼玉県日高市で作られている高麗鍋(こまなべ)です。



地元食材をふんだんに使ったキムチ鍋なのですが、

ポイントのひとつが地名と同じ高麗人参を入れること。

日高市とその周辺はかつて高麗(こま)郡と呼ばれ、

高句麗からの渡来人が集まって住んだ地域なのです。



現在も高麗川、高麗神社といった名前が残っており、

日本と高句麗を結ぶ歴史的な土地として知られています。



ちなみにその高麗郡ができたのは716年。



渤海国の使節が高麗人参を持参する少し前ですが、

高句麗からたくさんの人が渡っていたことを考えると、

記録よりも早く伝わっていたかもしれませんね。



そして、716年の建郡ということは、



「今年でなんと1300周年!」



いう記念の年でもあるということ。

現地ではさまざまなイベントを行っていますので、

高麗鍋を食べながら高麗人参の歴史に思いを馳せる、

というのもオツな趣向ではないかと思います。

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