K-FOODコラム

18. サワラの刺身という産地の贅沢




魚へんに春と書いてサワラ(鰆)。



産卵のため春になると沿岸部でよく見ることから、

春を告げる魚ということだそうです。



一方でサワラという名前自体を紐解いてみると、

すらっとした見た目から「狭腹」に由来するとか。

そのほかサゴシと呼ばれることもありますが、

これも同じく「狭腰」が由来になっています。



メタボ体型の人間としてはうらやましい限り。



普段何を食べたらそんな体型を維持できるのか、

魚の言葉が話せたら聞いてみたいものです。



ちなみに韓国語ではサムチ。



サムが数字の3で、チは魚を意味します。

すなわり「3の魚」という意味なのですが、

いったい何が3かというとこんな理由です。



1801年に書かれた『玆山魚譜』という本に、

サワラはサバと比較したうえで、3つの違いがある。

3つの味があり、3倍の大きさで、3倍早く泳ぐ。

そう紹介されているのが定着してサムチ。



比較されたサバが少しかわいそうですけどね。

ともかくも3が由来になったサワラです。






まあ、確かに立派なサイズですよね。



韓国では南海岸を主な産地としますが、

これは全羅南道の莞島(ワンド)で撮ったもの。

サワラの刺身を食べに行ったらお店の方が、



「写真を撮るならこれも撮っていきな!」



と大サービスしてくれたワンショットです。

みた感じ、1メートル以上はありましたね。



なお、韓国でもサムチ(3の魚)という名前から、

春の魚という印象が強く、3月7日はサムチの日。

もっぱら3月を代表する魚と思われていますが、

実際の旬は秋から冬にかけての10~3月です。



3月は名残の時期で、産地が盛り上がるのは、

11~2月ぐらいの寒い時期がいちばんです。






こちらが旬のサムチフェ(サワラの刺身)。



サワラって日本だと西京漬けにしたり、

幽庵焼きにしたり、刺身の印象は薄いですよね。

岡山あたりだと刺身でも食べると聞きますが、

東京育ちの僕はお目にかかったことがありません。



鮮度が落ちやすく、身が割れやすいことから、

なかなか刺身にしにくいのが理由とか。



なので、こんな大皿でわっと食べられるのは、

産地まで行ったからこその幸せと言えるでしょう。

まずは醤油にちょっとつけて食べましたが、



「なにこれウマイ!」



と小躍りするほどの感動でした。



分厚く切られていても食感は柔らかく、

マグロやブリのような、といっても脂は強すぎず。

うま味が長続きして、もう1切れと後を引く。






そして、現地流の食べ方がまた素晴らしく、

海苔で包むことで香りの魅力がぐっと増します。

サワラの刺身を薬味醤油にちょんとつけて、

海苔に載せて、キムチ、ニンニク、味噌も載せ、



「ガブッといけ!」



というのがお店の方の指示。

サワラの風味がどこか飛んでしまいそうですが、

決してそうならないのが旬の力強さでしょう。



むしろ莞島は海苔の名産地としても有名なので、

海苔のうまさとの相乗効果に悶絶しました。






そして、ごはんも必ず一緒に食べよとのこと。



先ほどの組み合わせにほかほかごはんを足して、

さらに大口で食べると即席のサワラ寿司みたい。

大皿の刺身がみるみるうちに減りました。



「旬のサワラは刺身に限る!」



と歓喜の声をあげながら味わいましたが、

本来、韓国でもサワラは焼き魚中心の大衆魚。

ソウルの路地裏あたりで煙を立てて焼いたのを、

定食として食べるのがお気に入りでした。



でも、こんなにうまい刺身を食べてしまったら、

焼き魚を食べるたびに思い出すかもですねぇ。



それはそれで不幸なのかもしれませんが、

サワラの焼き魚も、安くて美味しいのが魅力。

どちらも愛せるよう広い心を持ちたいものです。



春までにもう1度食べたいサワラ。

遠い南海岸に思いを馳せる日々です。

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