K-FOODコラム

13. 希少部位が美味しい夏の旬魚



夏はミノが美味しい。


と書くと、おそらく大半の人は、

焼肉の話かな? と思うかもしれません。

牛の胃袋(第1胃)を日本ではミノと呼んで、

そのシコシコとした食感を楽しみます。

韓国語だと「ヤン」。

ホルモン系を自慢とする焼肉店では人気の部位で、

夏に食べても、冬に食べても変わらず美味しいですね。

ただ、そちらのミノはそれとして……。

夏はミノが美味しい。

といえば魚のほうを思い出していただきたい。

韓国にはミノ(和名はホンニベ)という名前の魚がいて、

夏の真っ盛りがいちばん美味しい時期なのです。

漢字では「民魚」と書いてミノと呼ぶのですが、

これは民の魚、国民の魚という意味でとらえられます。

古くは朝鮮時代から多くの文献に民魚との記述があり、

当時から広く国民に愛された魚とわかります。

ただ、最近はだいぶ値段が高騰して超高級魚ですけどね。

国民魚というには高嶺の花になってしまいましたが、

それでも多くのファンが心待ちにしているのはいまだ事実。

ウキウキと食べに行くミノマニアはけっこう多いのです。

韓国では南西部の木浦(モッポ)あたりが主な産地。

周辺の全羅道エリアではどこでも夏には食べられますし、

ソウルにも専門店があって大勢の人で賑わいます。

さて、こちらがそんなミノの刺身。

ほんのりピンク色を帯びた白身魚ですが、

ポイントは上に載った3切れずつの希少部位ですね。

これを食べずしてミノを語ることはできません。

左側の赤色が濃い部分はペッサル(腹身)と呼び、

いちばん脂の載った大トロのような部位です。

かと言って、マグロほどには脂が強くなく、

ブリのようでもあるものの、もう少し上品にした感じ。

決して強すぎず、でもしっかりした脂が舌で溶け、

またサクッとした食感のよさも印象的です。

右側の白い塊はプレと呼ばれる浮き袋。

これを食べずしてミノは語れないというくらい、

ミノマニアが目の色を変えて味わう部位です。

キルムジャンというゴマ油と塩のタレにちょんとつけ、

口の中へ運ぶと、グニグニとした食感の中から……。

「ん~、ミルキィ!」

と叫びたくなるほど濃厚な味が染み出てきます。

もう、噛めば噛むほど、もっと噛んでいたい。

ひと切れで極上の幸せを味わえるお得な部位ですね。

そして、もちろん身のほうも絶品。

最初は淡泊に感じるかもしれませんが、こちらも噛むごとに、

じわじわと深いところからうま味が染み出てきます。

そーっとやってきて、ギュッとつかまれるような感覚。

「あ!」

と思ったときにはもう遅い。

気付いたらもうミノの虜です。箸が止まりません。

夢中になって、夢中になって、夢中になって。

「お鍋ですよ~」

の声でハッと我に返る。

刺身の後に欠かせない楽しみが、ミノチリ。

ミノのアラなどを煮込んだスープということですが、

これがまた、たまらないうまさなのです。

たいてい、韓国で刺身の後のアラ鍋というと、

メウンタンと呼ばれる赤く辛い味付けがほとんど。

でも、ミノの場合はチリ(ちり鍋仕立て)がいいですね。

見てください、この骨。

1m近くにもなる巨大サイズの魚なので、

骨も立派、そしてここからいいエキスが出ます。

アラ鍋よりも、牛を煮込んだコムタンに近いですね。

まさに骨の髄までをも味わって。

心ゆくまで満足したら、今年の夏も元気百倍。

韓国には補養食(滋養強壮の料理)という考え方があり、

栄養価の高いものを食べて病気の予防とします。

サムゲタン(ひな鶏と高麗人参のスープ)などもそうですね。

美味しいものを食べて夏を元気に過ごすのが韓国の食文化。

機会があればぜひミノも試してみてください。

←一覧へ戻る